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未だ満たされない、眠れる巨大市場
− 補聴器業界の現状とその理由 −

    はじめに
     補聴器市場とは大きな需要が潜在している市場である。しかし普及率は低く、業界の売上は伸び悩み、メーカー各社共に苦戦を強いられている。似た性格の製品として眼鏡があるが、こちらは平均して一人で2個以上iを持つに至る成熟した市場となっている。
     ここでは補聴器の市場がどのようにして出来たのか、そして現在の動向、今後の可能性を述べる。

    1.眠れる市場
     国内で補聴器を必要とする人の数は65歳以上の人口のうち約3分の1にあたる約730万人以上と報告iiされている。
     しかし、補聴器は一度使ってみて諦める人が多い。「補聴器を買ったが、使わなくなって引出しの奥に眠っている」と言う話をよく聞く。補聴器を使い続けている人の数は多くて150万人、厳しい見積りでは30万人とも言われている。ここに長年満たされた事のない巨大市場が眠っている。

    表1 補聴器販売台数と人口65 歳以上の推移
    19941995199619971998199920002001200220032004
    補聴器販売台数333,812319,682407,919412,626403,183400,659413,736412,094428,211447,757465,261
    人口65歳以上(千人)17,58518,26119,01719,75820,50821,18622,00522,86923,62824,31124,722
    人口65 歳以上の1994 年〜2003 年データは総務省統計局、2004 年データは国立社会保障・人口研究所の発表データを使用。


    2.原因
     補聴器が普及しないのは敷居が高い上に使い続ける割合が低いのが原因である。敷居を高くしているのは、使いたくないと思わせるマイナスイメージが強い製品である事。片耳だけでも平均が10万円以上と高価である事。そして情報が少ない事である。使い続ける人が少ないのは、製品の満足度が低い為である。以下に順を追って説明する。

    (1) 製品
     出荷台数iiiを見ると、耳穴型、耳かけ型、ポケット型の順に売れていることが分かる。

    表2 形式別販売台数の割合
    形式割合形式の説明
    耳穴型54%全て耳穴の中に入るタイプ
    耳かけ型36%本体が耳の後ろ側に収まる
    ポケット型10%携帯ラジオのように本体がポケットに入る

     これは補聴器が「隠したい製品」であることが一つの理由であり、メーカー各社も広告で目立たないことを売りにしている。目立たなくする為に、ポケット型を耳かけ型にし、更に耳穴の奥に入れて隠すようにし、肌と同じ色にして目立たないようにする。しかし、小さくすると必然的に音質や操作性が悪くなり、価格も上がる原因となる。
     2002年7月、伸び悩む補聴器市場を活性化させる為に、全国補聴器メーカー協議会は糸井重里氏とコラボレーションし「Communication AID 2002」キャンペーンを展開しイベントを開催した。この中で「補聴器は隠すようにするが、イヤリングみたいな補聴器なら隠さずに済む」との発言があり、前向きな提案として捉えられた。このイベントは残念ながら1回で終わってしまったが、翌年にワイデックス社はカラフルな補聴器をベネトン社と協力して製品化した。そして2005年の現在では、全てのメーカーでカラフルな製品を1モデルは提供するようになった。

    (2)価格
     補聴器店で販売される補聴器1台(片耳)の平均価格は10万〜20万円と言われている。補聴器店で売る際にはフィッティングという作業を行う為に、製品はフィッティングが出来るように機能が追加されている。
     フィッティングとは使用者の聴力特性に合せて調節を行う作業で、補聴器はフィッティングを行わなければ使える物にならないと言われている。週に1回づつ、最低1ヶ月は店に行って調節を行うのが普通である。この作業料が製品代に含まれている為に価格は高くなっているのが現状である。

    (3) フィッティングの難しさ
     フィッティングはオージオグラムを参考にする。オージオグラムとは、「ピー」という純音を用いて聞こえるレベルを測定するものである。健康診断の時に体験した人も多い事と思う。

    オージオグラム上で感度が落ちている周波数帯域を増幅するのが、基本的なフィッティングの考え方であるが、実際には簡単ではない。フィッティングは難しく、音を大きくし過ぎると聴毛細胞が破壊されてしまうので、「補聴器技能者講習会」ivという講習で研修を積んだうえで行う必要がある。
     最初の購入時に1回目のフィッティングを行うが、生活の中で使い始めると聞こえに不満が生じるので、再び店で調節を行う。子供の声がキンキンしたり、逆に男性の声がワンワンしたりするので、これが緩和されるように調節を繰り返すが、妥協点を探す作業なので「補聴器の音に慣れて下さい。完全に聞こえが戻るものではありません」と説明される。
     補聴器の権威である小寺一興教授(帝京大学)は著書vの中で、オージオグラムに捕われないで、語音明瞭度検査を重視する必要があると述べている。この語音明瞭度検査とは、検査用の音として純音ではなく言葉を提示して、知覚できた言葉の正解率を求める検査であるが、非常に手間がかかるので、補聴器店では独自の語音検査を行うところが多い。
     現状は熟練した補聴器店が経験を基にフィッティングを行っており、それらの店では、カウンセリングをしっかり行いながら調節する事で、ユーザの信頼を獲得する努力を行っている。


    3.難聴の影響
     難聴になっても補聴器を使用しないでいると、次第に音を聞き分ける能力が衰えてしまう。これは脳が習得した論理回路を忘れてしまうのである。
     人間は生まれた時には、音の洪水の中に放り出され、次第に脳は音声信号を処理するのに適するように、シナプスの結合が行われる。そして沢山の聞こえる音の中から母親の呼びかけを選び出せるようになる。しかし、難聴になっても補聴器を使わないでいると、この結合が次第に弱まって解けてしまう。そうなるとまた訓練を積まなければ、沢山の音の中から聞きたい音を聞き分けられなくなってしまう。
     難聴になり始めたら、少しづつでも補聴器を使用する事で、脳が衰えないように鍛える事が大切である。

    コラム〜 音は脳で聴く〜
     難聴の解明には脳で何をどのように識別したかを研究する必要が出ており、聴覚生理学や聴覚心理学という分野で研究が進んでいる。
     近年、進歩が著しいデジタルオーディオのMP3等に使われている音声圧縮技術は、これらの分野を基にしている。


    4.発展する為に
     第一生命経済研究所のレポートviによると、補聴器に対する一番の要望は「雑音を少なくして欲しい、聞き取りやすくして欲しい」との事である。
    表3 補聴器に対する要望
    1位 性能雑音を少なくしてほしい、聞き取りやすくしてほしい161件
    2位 価格安くしてほしい90件
    3位 形状デザインを良くして欲しい、小さくしてほしい65件

    (1) 音質
     現在の補聴器は「音に慣れて下さい」と説明されるが、一般の人は納得していない。ここには技術の進歩が期待される。
     補聴器は雑音が多いとよく言われるが、雑音と言うと健聴者は「サー」というアンプノイズを想像する。しかし難聴者の言う雑音とは、会話に混じる生活音の事を言っているので注意が必要である。健聴者の場合には、周囲で鳴る生活音の中から会話だけを分離して聞く事が出来る。しかし、補聴器の特性が不十分であると脳が音を分離できなくなり、生活音は会話を妨害する雑音となる。そして最新のデジタル補聴器は人の声以外の生活音は雑音としてカットしている。

    (2) 価格
     購入時の負担を軽くする為に、現在行われているように地方自治体から補助金を出すのは一時的な解決策でしかない。求められている声に応え普及率を上げる事で、販売量を増やし、量産効果で価格を下げる事こそが健全な市場の原理ではないだろうか。

    (3) デザイン
     カラフルになった次には、造形的なデザインを磨く事が期待される。使う人には誇りを与え、使わない人にも魅力的に映る製品となる事。これはメガネ業界が先に通ってきた道である。街中でイヤホンを装着している人が増え、男性でもピアスをする人が出てきた現在は、実現し易い時代になっている。

    (4) メディア
     例えばキムタクviiがドラマで補聴器を付けてカッコ良い難聴者を演じると、確実に補聴器の印象は良くなる。メディアの影響力は強く、一般のイメージを変える力がある。補聴器への抵抗感を無くすには、前向きに人生を楽しむプラスイメージが必要である。
     更に、優れた店の情報や優れた製品の情報がメディアによって公開されると、業界や製品に対する信頼度は向上する。

    (5) フィッティング
     熟練の経験を講習会で伝える事や、その考え方を論理にする研究が必要である。また、聴覚心理学等の新しい分野の研究が深まると、フィッティングが要らない補聴器が出来る可能性がある。そうすると、価格が安くなり、使用者がいちいちフィッティングに出向かなくても良いというメリットが出てくる。そして、我慢や慣れを強いられる音ではなく、眼鏡のように納得できる効果があると、使い続ける割合は自然と上がるであろう。
     眼鏡も車も、初期の時代には不便さがあった。しかし、技術の進歩は製品を便利にするものである。

    おわりに
     補聴器に限らず介護・福祉用品全般に言えることだが、購入時に比較検討する情報が乏しい。例えば車の場合、新車の比較レポートを様々な車雑誌で読む事ができ、本では徳大寺氏が書く「間違いだらけの車選び」等の広告料に縛られない辛口の論評があり、車を購入する際の参考となる。しかし補聴器の場合、購入の際に得られる情報は補聴器店の説明と、人によっては耳鼻科の先生からの情報がある程度であり、決して情報に恵まれていない。しかし最近は、難聴者もインターネットの普及により発言の場が急速に広がっており、情報交換の場が増えてきている。
     「間違いだらけの車選び」の著者、徳大寺氏は「自動車業界は批判に対して寛容であった」と語っている。自動車業界に学ぶ所は多く、批評に対して寛容であり、購入者の満足度を調査して製品や店のサービスを向上させる姿勢が、ユーザの満足度を向上し、業界を発展させた。21世紀は全ての業種が比較される時代であり、それは製品・技術・サービスの全てで比較される。他の業界から優れた点を積極的に吸収し学び取る姿勢が、生き残る為に、そして業界全体が発展する為に必要ではないであろうか。

iコンタクトレンズ除く
ii富士経済社、矢野経済社調べ
iii補聴器メーカー協議会の公表値を使用
iv財団法人テクノエイド協会主催
v「補聴器フィッティングの考え方」1999
著者小寺一興発行(株)診断と治療社
vi株式会社第一生命経済研究所
「聴覚・補聴器に関する生活者の意識」
研究開発部水野映子作成
vii木村拓哉:影響力の大きい俳優の一人


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